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ショクパンヨリフランスパン

演劇以外の日々の、備忘録

いわきのことと その2

滞在制作がはじまった。

 

「魔法」は短編のオムニバス形式で、滞在1日目には全体の半分の台本を書き上げて持っていった。まだ最後まで書き上がっていないのに生徒たちが「はやーい!」って驚いてたのは、アトリエ公演を演出した危口さんのあとだったからだろうな〜。台本早いなんて初めて言われた。

書いたエピソードに関してはある程度自信もあったけど、不安もあった。僕は普段は当て書きをするタイプなのだが、この日以前に彼女たちと稽古した期間は3日程度でそれぞれの人となりをまだ掴み切れていなかった。だから、あえて当て書きを一切せずに書いた。僕にとっては初めてのことだった。

配役を入れ替えて、何度も本読みをする。収穫だったのは、いつもに比べて「役」のキャラっぽさが少ない分、彼女たちのの個性がより際立ったことだ。ちょっとしたセリフの言い回しや間に、それぞれの表情が浮かんでくる。みんなの本読みを聴きながら「あ、この役ってこういうキャラクターなのかも」とたくさんの発見をさせてもらった。

 

稽古を終えて、かなこ先生に送ってもらい駅前のホテルに入る。稽古期間中は、ずっとかなこ先生が送り迎えをしてくれた。僕に気遣っていわきの話や生徒のことをたくさん話してくれた。作品を作っていく中でとても貴重な時間だった。

 

次の日も新しいエピソードの台本を渡して本読みを繰り返し、滞在三日目あたりでようやく配役を決定し、以降はガシガシ動線を決めていく。普段はもっと頭を抱えて「うー」と呻きながら作っていくのだけど、今回は即決断していくのだという自分ルールを作っていたので、かなり早いペースでシーンを組み立てた。そういえば、いま思うと意外なのだけど、稽古期間中に彼女たちと世間話のようなものをした記憶ってほとんどない。休憩時間も、彼女たちがきゃっきゃと楽しそうに話してるのを僕はパソコンいしりながら聞いているだけで、彼女たちが僕に話しかけることはなかったし、僕から話かけることもなかった。まあ、僕の場合はたんに恥ずかしくてだけど。

 

休憩中にみんなが「イヤホンガンガンゲーム」をし始めたことがあった。僕はその遊びを全然しらなかったのだけどどうやら流行っているらしい。みんながイヤホンをつけて爆音の音楽をかけながら行われる伝言ゲーム。もちろん伝えられる言葉はかき消されるので、相手の口の動きで内容を読み取らなくちゃならない。これをはたから眺めるのがとても楽しかった。言葉は間違って相手に伝わるし、間違った言葉はさらに形を変えて次の人へ届く。最終的には原型を全くとどめていない言葉が出来上がって、彼女たちは一斉に爆笑する。正しい言葉を伝えようとするけど間違って、でも間違うからこそ笑いあってるその姿に、大げさな言い方だけど僕はとても感動した。なんて美しいコミュニケーションだろうっておもった。稽古場全部に広がる笑い声の中で、いま僕が感じたこの感動を少しでも舞台にあげられたらいいなって強くおもった。

 

学校とホテルの往復のなかで、気持ちが疲弊していく時期もあった。自分の書いた「高校生」が彼女たちを縛り付けてるんじゃないかっていう不安はずっとあって、それは日に日に大きくなっていった。30歳手前の男が書いた理想の女子高生の物語になってしまったら最悪すぎる。目も当てられない。物語に登場する高校生たちが、実際の高校生とかけ離れていたとしてもいい、というか望むところだ。でも、あたかも本物であるかのようにしたくはない。だって本物は、その場で演じている彼女たちそれぞれだから。本当にはいない物語のキャラクターたちと、いまここにいる彼女たちを等しくおんなじに舞台に存在させたい。僕の言葉が彼女たちの枷にならずに、彼女たちが身軽になるための武器になるといい。そんなことをホテルでうなだれながらずっと考えていた。

いつだったか、稽古が終わってそんなことで悩みながら稽古場で横になっていると、あゆかとふうかが近寄ってきて話しかけてくれた。気を使わせてしまってるなあと反省しつつとても心が安らぐ時間だった。なんてことない話をした。髪を切ろうとおもってるからどっちか切ってくれないかなあ、とかたしかそんな話。そいえば、「魔法」の千秋楽が終わったらみんなに断髪式を行ってほしいという夢があったけど、気持ち悪いなとおもって言い出さず終わったな。

 

サウナにハマったのもこの時期だった。

カプセルホテル「キュア」に宿泊してたころ、それまでサウナなんて全然行かなかったのに毎晩通って疲れを癒してた。サウナでぼーっと過ごす時間が、頭を整理する時間にちょうど良かったのだ。

ちなみに、地元仙台にも「キュア」はあって、ここのサウナは東北唯一ロウリュが楽しめるのだけど、長くなるからサウナの話はまた今度にしよう(というか無理やりサウナの話をねじ込んだ感がある)

 

「魔法」を作ると決めたときに、20人全員でつくるシーンを絶対にいれようと思っていた。だけど、どんなものにするかはなかなか思いつかなかった。彼女たちがバラバラなまま、それでも一緒にいられるようなシーンにしたいとはおもっていたけど、具体的なアイデアはいっこうにでてこない。休憩の合間にセリフを書いては、くだらないことで笑いあうみんなの声を聞いて削除した。なにげない言葉で満たされているこの休憩時間をそのまま舞台に乗せるような、それでいてそのままじゃない彼女たちの小さな光をすくいとれるような、そんなシーンにしたい。

そして「光」を書いた。

 

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